教科書は地味に面白い

会長つぶやき

私の若い頃には、教科書について、つぎのようなことをよく耳にしました。

「教科書を教えては駄目、教科書で教えるのだよ」と。

要するに、教科書は一つの素材であって、それを使って何らかの工夫をする、あるいはそれをヒントに学習を拡げるといった意味で「教科書で教える」ことが、大切だということなのでしょう。

私は、「課題はもっと手前にある」と言い続けてきました。

例えば、この教科書との向き合い方。そもそも、自分がどこまで教科書を読み込んでいるのだろうかと問い直すことから始めました。ふり返ってみると、日常の忙しさから(半分以上言い訳ですが)速読はしても精読することは少なかったように思います。

そんな私に、教科書づくりの厳しさの一端を教えてくださったのが、光村図書の吉田直樹さんでした。国語教科書に取り上げる作品をどのように見出すかというお話でした。今はわかりませんが、お話を伺った当時は、図書館に毎週のように通われたといいます。そして、児童用図書の返却コーナーをよく観察されたとおっしゃいました。すると、今流行りの人気本に混じって、地味に読み続けられるものがあるというのです。そのような一時の流行りではない本を記録しておき、教科書に取り上げる作品の候補とするというわけです。

当然のことながら、それらの作品を繰り返し読まれ検討されるのでしょうから、いかに地道な取り組みかということが、私にも推察できます。

最近は、教科書をじっくりと眺めることが多くなりました。読む前に眺めるだけで、教科書は「地味に面白いなあ」と感じるのです。眺めただけで、わくわくする工夫やなるほどと思うことがあることに気づかされます。

今、鈴木健二さんの「思考のスイッチを入れる 授業の基礎・基本」(日本標準)を読み直しています。なんとその第一章 「おもしろがる 〜教材研究のコツ〜 1だれも知らなかった教科書活用」の冒頭に記されているのが「1 教科書はおもしろい」です。最初のところのみを引用させていただきます。大いに共感したところです。

「『研究授業をするので授業づくりの相談に乗ってほしい』という教師がときどき研究室を訪ねてきます。そのとき必ず『教科書をもってきてください』というお願いをします。教材研究の第一歩は、●教科書をきちんとよみとること(教科書研究)だからです。・・・」

今でも、現場では「教科書を教えるのではなく、教科書で教えるのだよ」と言い続けている方がおられます。そのこと自体を否定するつもりは全くありませんが、私はその前に、(児童用の)教科書を自力で読み込み、自分なりにその意図や意味を深く理解したいと思うようになりました。そこには執筆者や編集者の思いや願い、つまり「心」がこもっているように感じるからです。なかなか、難しいことではありますが、自分なりに「読み切った」と感じられるまで教科書を楽しみながら眺め、読み続けたいと思います。客観的かつ冷静に教科書を分析することも大切だとは思いますが、主観的に自分が何を感じどう教科書の意味を理解するのかを大切にしたいと思うのです。教科書をつくってくださっている方に感謝の気持ちを持ちながら。

 

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